2017年07月01日

琥珀の夢(356)やってみなはれ

国産初の本格ウイスキー「白札」も、日本人に少しはなじみのあるはずの「オラガビール」も売れ行きは低調だった。

大日本麦酒、麒麟麦酒、日本麦酒鉱泉の3社体制にあったビール市場に、安さで挑んだ信治郎だったが、既存勢力は容赦なくつぶしにかかっていた。


「オラガビール」は他社の古瓶を使って詰めていたため、一社が商標権侵害の訴えを起こしたのである。

問屋筋も心配したが、信治郎は「それだけビールの商いは宝の山ということだ」とむしろ確信した。


ビールは何としても寿屋の柱にしなければならないと思った信治郎は、逆風の中でビール工場の拡張を図った。

そんな時、竹鶴が信治郎に、オラガビールの味覚のことでやってみたいことがあると言ってきた。話を聞いた信治郎は、大きくうなずいた。

「そら面白い。やってみなはれ」



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2017年06月27日

琥珀の夢(352)サントリーウイスキー

「サントリー」ブランドの誕生!

僧侶から日輪の話を聞いた信治郎は大阪に戻ると、神戸のセレース夫人に電話を入れた。
「奥さん、太陽はSUNでよろしゅおましたですかいな?」

はい、太陽はSUNです、と言った夫人は、常々鳥井さんは太陽のような人だと夫婦で話していると笑った。


信治郎は小紙にトリイサンと書いてみた。しかし商品名にトリイサンはおこがましい。昨日の延暦寺の僧の顔が浮かんだ。

「一番上で日輪がしてくれます」
そうか、日輪が上か、と信治郎はサントリイと書いて、口の中で何度かくりかえすうち

「そや、サントリーがええ」
信治郎は半紙にサントリーウイスキーと書いてみた。気に入った。


信治郎に呼ばれた宣伝課の連中は、「サントリーウイスキー」というネーミングに皆目を輝かせて賛同した。

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2017年05月28日

琥珀の夢(323) 竹鶴政孝

マッサン登場!

信治郎はウィスキー造りにかかる費用の目算をしてみた。出てきた数字を見て大きくため息をついたが、すぐに思い直した。

「まだ何ひとつしてへんうちからタメ息なんぞ零(こぼ)してからに、福がにげてまうで」


後にも先にも信治郎が何度もため息を零したのはあの時だけだった、と後年クニが述懐している。

商品ができるまで5年、10年という時間を要するウイスキー作りを成功させるきっかけが、信治郎にはまだ見えていなかった。


信治郎は夜中に家を抜け出し、築港工場のある桟橋で自分の手を見つめた。「同じ人間の手や。わてのこの手でもでけるはずや・・・」

夜明けに店に戻ると、ロンドンから電報が入っていた。技師として招こうとしていたムーア博士の伝言を伝える、三井物産の中村副支店長からだった。


今、日本人でウイスキー造りを学んだ人物が帰国しているはずだ。彼に委せればさまざまな経費を節約できるはずだ、とあった。

竹鶴政孝、というその人物の名前には記憶があった。摂津醸造の社員で、ウイスキー造りの留学を終えての帰国だと記してあった。

posted by 琥珀色 at 09:49| 琥珀の夢 登場人物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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