2017年07月01日

琥珀の夢(356)やってみなはれ

国産初の本格ウイスキー「白札」も、日本人に少しはなじみのあるはずの「オラガビール」も売れ行きは低調だった。

大日本麦酒、麒麟麦酒、日本麦酒鉱泉の3社体制にあったビール市場に、安さで挑んだ信治郎だったが、既存勢力は容赦なくつぶしにかかっていた。


「オラガビール」は他社の古瓶を使って詰めていたため、一社が商標権侵害の訴えを起こしたのである。

問屋筋も心配したが、信治郎は「それだけビールの商いは宝の山ということだ」とむしろ確信した。


ビールは何としても寿屋の柱にしなければならないと思った信治郎は、逆風の中でビール工場の拡張を図った。

そんな時、竹鶴が信治郎に、オラガビールの味覚のことでやってみたいことがあると言ってきた。話を聞いた信治郎は、大きくうなずいた。

「そら面白い。やってみなはれ」



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2016年11月09日

琥珀の夢(129)

儀助は「蜂印香竄葡萄酒」を一口飲んでしばらく目を閉じていたが、風呂へ行くと言って立ち上がり、「お前も飲んでみい」と言って部屋を出た。

信治郎は問屋の主人の無礼な態度にまだ腹をたてたまま、葡萄酒を茶碗に注いだ。一口飲んだ信治郎は目を開いた。


二口、三口と、儀助に教えられたとおり葡萄酒を口に含んで口の中に葡萄酒が広がるようにした。

「これや、この味や」信治郎は大きくため息をついて声を上げた。「この味を探しとったんや」

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2016年09月28日

琥珀の夢(88)額の傷

小西儀助が、信治郎の待つ2階の作業場に現れた。信治郎が頭を下げ、顔を上げると儀助が一瞬、信治郎の顔を見た。

儀助は持ってきた紙包みを開け、信治郎にすり鉢とすりこぎを持ってくるように命じた。儀助は手袋をして、包みの中身を鉢の中に移した。


それは乾かした芋の中身だと言って、儀助は芋の繊維を崩さないようにそれを糸くらいにほぐすように信治郎に言った。

丁寧にやれ、と言って儀助は隣で本を読み始めた。思ったより難しい仕事で、1時間たっても半分も進んでいなかった。


儀助が新吉に、下で濃い茶を入れさせて持ってくるようにと言った。信治郎はトメとマキに頼み、信治郎は茶が注がれた椀と急須を持って2階に戻った。

「トメが入れる茶は美味いな」茶をゆっくり飲んだ儀助が言った。トメは宇治の近在で育ち、子供のころ茶摘みをしたと聞いてトメを雇ったのだった。

「ところで新吉、おまえ、その額の傷、どないしたんや?」儀助が尋ねた。

(ひとこと)
前回描かれた夜鍋以来、信治郎は儀助に信頼されているようですね。しかし信治郎の額の傷は、誰の目にもかなり目立つのでしょう。

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