大日本麦酒、麒麟麦酒、日本麦酒鉱泉の3社体制にあったビール市場に、安さで挑んだ信治郎だったが、既存勢力は容赦なくつぶしにかかっていた。
「オラガビール」は他社の古瓶を使って詰めていたため、一社が商標権侵害の訴えを起こしたのである。
問屋筋も心配したが、信治郎は「それだけビールの商いは宝の山ということだ」とむしろ確信した。
ビールは何としても寿屋の柱にしなければならないと思った信治郎は、逆風の中でビール工場の拡張を図った。
そんな時、竹鶴が信治郎に、オラガビールの味覚のことでやってみたいことがあると言ってきた。話を聞いた信治郎は、大きくうなずいた。
「そら面白い。やってみなはれ」