2016年08月20日

琥珀の夢(50)薬は国を守る

信治郎は湯を沸かしながら特異な香りに気がついてそちらに目をやった。「これは麝香や・・・」儀助が話し始めた。

清國、蒙古、朝鮮に生息するジャコウジカの麝香腺から取り出したものを固めて乾燥させ、粉末にしたもので、鎮痛剤にも興奮剤にもなる。


そんな儀助の独白を、信治郎は一言も洩らさず聞きながら、それぞれの葉の色や形、そして何より匂いをかいで覚えようとした。

儀助は骨状のものを削りながら、時折削りとったものを鼻先で嗅いでいた。やはり匂いが大事なのだ、と信治郎は思った。


すでに2時間が過ぎていたが儀助は一度も作業を止めなかった。この気力が大事なのだと信治郎が思った時、儀助が言った。「薬言うもんは国を守ってんのや」

信治郎は儀助がそれを自分に言っているのに気がついた。「薬が、国を守ってんでっか」信治郎に儀助が大きくうなずいた。

(ひとこと)
緊迫感のある光景ですね。


ラベル: 琥珀の夢 麝香
posted by 琥珀色 at 12:28| 琥珀の夢 小説 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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