2016年07月08日

琥珀の夢(5)底力

ところで何を見ていた、と信治郎に問われた少年は、「この葡萄酒があんまり綺麗なんで、つい見惚れてもうて」とあわてて答えた。

すると信治郎は「そら嬉しいこっちゃ」と少年の顔を見つめながら言った。少年には、信治郎が何を喜んでいるのかわからなかった。


「坊には見どころがある」信治郎は続けた。お客が手にとってみたい、使ってみたいと思うことが商いの肝心の1つだと少年に教えた。

「ええもん作るためなら百日、二百日かかってもええんや」そうしてできた品物には底力がある。品物も、人も、底力だ。

そう言って信治郎は少年の頭をやさしくなでた。


大実業家の鳥井信治郎に「見どころがある」と認められた少年。ただ者ではありませんね。



posted by 琥珀色 at 04:22| 琥珀の夢 小説 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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