2016年12月22日

琥珀の夢(170)小樽へ

出航の朝、信治郎はホテルから家族に絵葉書を出した。小樽まで仕入先の見分に行って参ります、と書かれたはがきを見て、驚いた母のこまが喜蔵を呼んだ。

「信はん、小樽へ行くそうやで」
「小樽って、あの北海道の小樽でっか?」


喜蔵も初耳の話だった。絵葉書には豪華客船の写真が印刷してあった。まさかこの船に乗って小樽へ、というこまに、それは無理だと喜蔵は言った。

こんな豪勢な船に信治郎が乗れるはずがないと聞いて、こまは安心した。しかし喜蔵は気がついていた。

写真の客船「三池丸」の一等デッキでシャンパン片手に海を眺めている男は、たしかに信治郎だった。




posted by 琥珀色 at 16:14| 琥珀の夢 家族 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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