2016年08月30日

琥珀の夢(60)水入らず

父の忠兵衛は夏風邪をこじらせていたが、起き上がって信治郎を迎えた。信治郎が銭の入ったぽち袋を差し出すと、忠兵衛は何度もうなづいた。

小西儀助商店での様子を信治郎が話し始めると、忠兵衛はせつが入れた湯だと言って信治郎に入浴を勧めた。


信治郎は次姉のせつにもぽち袋を渡し、風呂に入った。上がると着替え場に新しい着物が置いてあった。

家族は久しぶりに水入らずで夕食を取った。尾頭付きの魚を見て「たいそうなもんですな」と信治郎が言うと、「初の藪入りでっせ」とこまがうれしそうに言った。


休みは3日ほどの予定だった。ゆっくりしろという両親のことばに、「へぇ〜い」と信治郎は答えた。

(ひとこと)
久しぶりののんびりした情景ですね。これ1回か、まだ続くのか楽しみです。



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2016年08月22日

琥珀の夢(52)守り神

信治郎が主人の夜なべ仕事を手伝ったのを知った弥七が、信治郎にいまいましそうに声をかけるのを見ていた常吉が、「信どんは強いんやな」とこぼした。

「神さんの力で助けてもらうんですわ」信治郎は答えた。「わて每日早う起きて神農さんにお祈りしてるんだす」。

「神農はん」はこの町の守り神で、中国の強い皇帝だったことを教え、信治郎は常吉を少彦名神社へ誘った。


梅雨が明けた暑い夏の朝早く、信治郎は大八車を引いて店を出、西成の伝法村にある石灰工場へ向かった。

そこで大八車一杯の石灰を積んで帰るのが仕事だった。行きは空でいいが帰りは重くてつらいその仕事をするのは、信治郎にとって二度目だった。


(ひとこと)
先輩の弥七の様子を見ていると、すでに信治郎の仕事をする上でのマインドは先輩を超えていることがわかりますね。


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2016年08月21日

52. 琥珀の夢(51)難波の医師

儀助の言葉は決して大げさなものではなかった。薬は人間が地球に登場し、動植物を食用として生きるうちに、経験によって薬用になると知ったものである。

道修町で「神農さん」と呼ばれる少彦名神社も、実は古事記・日本書紀に記された医療の始祖のひとつを祀ったものである。


日本書紀によれば、朝鮮の新羅から5世紀に訪れた医師が難波に住んで医業を開始し、「難波の医師(くすし)」と呼ばれたことが記されている。

当時、疫病の大流行に頭を悩ませた国のトップの方針で、薬物を尊重し、その技術を積極的に受け入れたのだった。


奈良や京都を背後に持つ難波に医師が日本で最初に開業したのは、そんな背景があった。



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